お香の歴史

パピルス お香の歴史
お香の歴史

【お香】は日本の大切な文化の一つです。 
目に見えない香りを、我々日本人は1400年の年月をかけて文化に育てました。
今日は、このお香の歴史を簡単にご紹したいと思います。

お香は一体いつからどこで登場したのでしょうか?

エジプト壁画

お香は大昔、人が文明を興したときからあったといわれています。
火に木をくべた時に広がるその香りにきっと神秘を感じ、人の範疇を超えた力であると思ったかもしれません。
煙が天へあがっていく様子を、人々は神につながるツールととらえ、宗教儀式に利用したのです。
また、お香は、その効能から薬としても役立っていました。

お香が歴史の舞台に出てくるのは、紀元前3000年頃のメソポタミア文明で、焚かれたシダーや古代エジプトのキフィと呼ばれる調合した香りです。
ファラオや神官が神にお香を捧げ、悪魔を退ける聖なるものとして使用した一方で、お香はミイラ作りには欠かせない防腐剤としても重宝されました。
そのころまでは、お香は、乳香や没薬と呼ばれる樹脂やシダーなどの香木が単体で焚かれていましたが、キフィ以降は混ぜ合わせられ、香りが複雑化していきました。
香りはその後、東と西にわかれ、西はアラビアからヨーロッパへ伝播し、香水や精油などの液体文化として発展し、東はインドで仏教と結びつき、中国を経て日本に伝わり、ヨーロッパとは逆の個体、粉末のお香文化として今に至るのです。

日本人とお香の歴史

 インドの、お釈迦様の言葉を記した経典「超阿含経」「増一阿含」には、「お香は穢れをとるもの」 「お釈迦様の説法を聞くときには焼香をしなさい」「供養するときはお焼香しなさい」などの記述があります。
 お香はインドで仏教と密接になった上で、中国を経て日本に伝来しました。
その時期は諸説ありますが、文献として残っている最初の記述は、「日本書紀」の中、595年「香木が淡路島に漂着した。」になります。
島民が竈に火をくべたところ、なんともいえない良い薫りがしたため、その流木を朝廷に献上しました。時は奈良時代推古天皇のもと、聖徳太子が政治を行っていた時代です。聖徳太子は、その流木を「これは沈水沈香である。」と応えたそうです。
一部の知識階級の人には、仏教とともにお香の知識が広まったと考えられます。

鑑真和上

 その後、仏教と深い結びつきがあるお香が大きな発展を遂げるのは、754年に鑑真和上が、5回の失敗でもあきらめず、ついに6回目の渡航により唐より来日したことによります。その時和尚は66歳、両目は失明していました。
 唐より伝えられたものには、仏典、建築、彫刻の他、32種の香薬の原料がありました。香は香料の他、薬品として最新の知識が伝えられたのです。
 鑑真は僧侶でありながら多方面に精通する知識を持っていました。そしてこの香料で性能の高い薬、丸薬を作りました。これ以降、単品で焚いていたお香から、「配合する」という、香に関する幅を格段に広げる習慣が生まれ、その後の香文化の発展に多大なる影響を与えることとなりました。

貴族と空薫物

平安貴族

 894年に遣唐使が廃止されたことにより、外国の文化を模倣するのではない、独自の日本文化が発展を遂げます。
この頃宮中の最高貴族らが自分の調合した香りの優劣を競い合う「薫物合わせ(たきものあわせ)」という遊びが大流行しました。この頃のお香の中心は「練香」とよばれる粉末の香料に炭の粉や蜜や梅肉を練りこんだお香です。

 1008年頃の「源氏物語」の中にこのお香がたくさん出てきているのを見ても、お香は文化の中心、知的階級のステイタス、センスや教養、財力をしめす雅人にとってはなくてはならない存在でした。
お香の歴史の中でも平安時代が日本の香のスタイルが確立した華やかな時代でした。
有名な春夏秋冬の季節の移ろいを見事に香りで表現した「六種の薫物」は、そのころの日本人の美意識の集大成ともいえるでしょう。
 この頃、神仏にお供えする「供香」、衣類に香りを移す「衣香」、室内を香らせる「空薫物(そらたきもの)」と主に3つの文化が定着しました。

武士とお香

伊達政宗

 平安時代末期から台頭してきた武士の世界になると、きらびやかな雅な世界から、生と死を見つめる禅的な精神性を体現したシンプルな香木を焚く「一木香」が主流となります。
複雑に混ざり合い調合された薫物の香りよりも、香木そのものに火をつけ、香りを楽しむことが好まれました。
特に「沈香」とよばれる香木を焚き合わせる「香合(こうあわせ)」が主流となり、その後御家流と志野流に代表される香道に発展しました。

お香と現代

現代のお香

 江戸時代になると、ようやく武士だけでなく庶民にもお香の世界が開かれました。
匂い袋や香枕、着物の袖に入れる袖香炉など、生活に香りの文化が広がっていきました。
お線香ができたのも江戸時代と言われています。

 その後明治維新による西欧化と廃仏毀釈により、日本文化は発展に陰りを見せますが、お香の世界は、古いものを受け継ぐ一方で、現代的でモダンで明るいお香のイメージを加味し、リラクゼーション、斬新な色や形などのトレンドを意識したお香も作られるようになりました。
今ではヨガ教室や瞑想時にアロマのように香りを楽しむためと若者の人気もあり、おしゃれなセレクトショップでもお香は癒しグッズとして人気があります。
その時代、時代で新しい要素を取り入れ、お香の世界も様々な広がりを見せることでしょう。

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